恐怖のナポリタンからメディア・リテラシーを学ぶ

投稿日:2019年04月14日 17時58分07秒

恐怖のナポリタンという謎かけがある。


ある日、私は森に迷ってしまった。
夜になりお腹も減ってきた。
そんな中、一軒のお店を見つけた。
「ここはとあるレストラン」
変な名前の店だ。
私は人気メニューの「ナポリタン」を注文する。
数分後、ナポリタンがくる。私は食べる。
……なんか変だ。しょっぱい。変にしょっぱい。頭が痛い。
私は苦情を言った。
店長:「すいません作り直します。御代も結構です。」
数分後、ナポリタンがくる。私は食べる。今度は平気みたいだ。
私は店をでる。
しばらくして、私は気づいてしまった……
ここはとあるレストラン……
人気メニューは……ナポリタン……

これは意味が分からない。なのでそれに対していくつかの解答がまとめられている。
1つは

「ここは とあるレストラン」、「ナポリタンが人気です」の英文は”This is a restaurant”, “famous for neapolitan”。
This is a restaurant
famous for neapolitan
ここでポイントは、”neapolitan”がスラング(俗語)で「不潔な料理」 を意味するってこと。

なるほどなんとなく答えになっている気もする。しかしメディア・リテラシーを考えるなら、このソースが必要だろう。だいたい日本ではナポリタンは有名だけどナポリではオリジナルのナポリタンがあるがそんなに有名ではないし原文が英語ってのもあやしい。
そこでまずこの原文が英語であるのか探してみる。
googleにてquote付きで検索する”This is a restaurant, famous for neapolitan”
quoteをつけることでフレーズ(連続した文)検索してくれる。するとまあ日本語しか引っかからない。そこで右上のギアマークから検索オプションを選び言語タグから英語を選択する。これで概ね英語で書かれているというページに絞り込んでくれる。しかし検索されるのは日本語のみ。実際にページを開いてみると、コメント履歴など英文が50%以上を占めているのですね。なるほど。
というわけでそんな原文はなさそうだぞと分かる。quoteを外すと単語マッチになるが、その場合に第一位に検索されるのはNeapolitan pizzaだ。

ではneapolitanが不潔な料理というスラングだというのは正しいのだろうか。まずは単純にneapolitanで調べてもそんな語源は出てこない。そういう時はEnglish-English-Dictonaryを検索するのがいい。オックスフォード英英辞典で調べてみる。するとナポリ人またはナポリ居住者とでる。まあそうだよね。そして語源が書いてある。nea=NEW polis=CITYというギリシャ語からの言葉だそうで。ニューヨークとか、新札幌とかまあそんな意味合いを持ってるわけだ。そこにどう考えても不潔な料理はないと考えるのが普通だ。しかもナポリは美食の地でもあるわけだし。ついでにミネアポリスもギリシャ語でmini=RIVER polis=CITYだそうだ。
napo

以上から不潔な料理説は否定していいだろう。
次にこの文章を包含する全文があるという説。


“「変わったレストランで美味しいナポリタンを見つけたんだ」
「何が変わってるの?インテリア?メニュー?」
「今度こっちに来た時に教えてあげるよ」

主人公には離れた地で暮らす恋人がいた その地に、今、主人公は訪れている。昨夜から何も口にしていない。
夜になり、何かに誘われるように街に出る。
見知らぬ土地で一軒のレストランに入る。

「変な名前のレストランね・・・」

そんな事を思いながら。
彼の好きだったナポリタンを注文する。
数分して出てくる。私は食べる。”
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“が、しょっぱい。頭も痛い・・・ ・・・これは涙の味?ああ、私泣いているのか・・・あれだけ泣いたのに・・・何故?
涙が止まる頃、パスタは冷めてしまっていた。
店長がそばに来る。

「どうかされましたか?」
「ごめんなさい、ちょっとしょっぱくて」

そう言って無理に笑ってみせると 店長は私を見て何かに気付いたのか、優しくこう答えた。

「すいません作り直します。御代も結構です。」

店を出る時、店長は静かに言った。

「・・・彼とは親友でした」

まだボーっとしていた私の頭にその言葉はすぐには理解できなかった。
しばらくして、私は気付いてしまった・・・ ここはとあるレストラン・・・変な名前のレストラン・・・ 人気メニューは・・・ナポリタン・・・

「変わったレストランで美味しいナポリタンを見つけたんだ」

連れてきてくれたのは、・・・彼の想い”

“コレが、ナポリタンの全文。部分的に抜けて皆に伝わっているのが怖い話だと思う。”


なるほど納得できる。がこれはソースなのかってことが疑問だ。早速文書の一部をフレーズ検索してみる。当然ながら日本語の文章がひっかっかるはず。ところがこれが最近の投稿でしか見つからない。googleの検索ツールから範囲指定で日付を絞っていくことにする。するとだいたい2009年あたりの投稿が多いようだ。ちなみにこんなのも見つけた。これが2005年8月26日。
ではオリジナルはいつからあるのか。最初の文言にしかないフレーズで絞り込んでいくと、多分2004年4月3日のこれが最古だと思われる。HTMLの形式からいっても携帯向けのページであり、おそらくメールか何かでテンプレが回っていたんだと推測される。これから急速に2chなどに拡散される。
ちなみにgoogleの表示日付はどうもファイル日付を示しているらしくて、日付は古いけどどうみても最近のものがある。こればかりは内容をみて判断していくしかない。またはwaybackmachineなどに残っていれば確認できるが、まあ難しいと思った方がいい。
ということで、不潔なレストラン説と原文がある説は間違いといって構わない。

2004年の携帯
このように状況をしぼっていって嘘を見抜くことは今後も必要となると思う。

結局答えは?時期からいって携帯でのWEBもままならない期間にメールで熟成された文化なのだと考える。ようするに答えがないメールのネタだったのだろう。本当の真実は当時の携帯のメモリに眠っているかもしれない。

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